希望はそれを望み続ける限り、すべての人の心の中にずっと宿っているもの。
(小説版ARIAよりアテナさんが引退を決意した先輩に送った言葉)
ということで、明日はオレンジぷらねっとを主題にしたARIA15周年劇場版『ARIA The CREPUSCOLO』の公開日。
前夜ということで、3つほどオレンジぷらねっとメインのエピソードを観て、読んで、振り返ります。
・ 『ARIA The ANIMATION』第6話『その 守りたいものに・・・』。
アテナさんとまぁ社長の初登場回ですね。
普段、役に立っていないように思える左手をいじめるアリス。
こっそり拾ってきた子猫にまぁくんと名付けて、ペット禁止の寮でこっそり飼おうとするアリスを、アテナさんが優しく守り、そして、その自然過ぎる左手のような優しさにアリスが初めて気付くエピソード。
〈歌は、誰かに聴いてもらうものだから。
この子は、オレンジぷらねっとの新しい社長になるの。蒼い目の守り神。〉
ちなみに、オレンジぷらねっとの制服を着る灯里が唯一見られます。
・ 《秋》風車の丘の贈り物-小説版『ARIA 四季の風の贈り物』より。
あえて、マイナーな小説版の1エピソードから。
灯里とは逆に夢を抱いてネオ・ヴェネツィアからマンホーム(地球)に旅立つ若者と出会って、自分の旅立ちを灯里が思い起こす春、映画祭の一幕で藍華も出てる姫屋のCMをアルくんに見せるまでを描く夏、アリシアの親友がネオヴェネツィアにお店を出すために星を渡って、ネオヴェネツィアに戻ってくる冬とどれも良いんですけど、アテナさんがメインのこの『秋』がね、何回読んでも泣いちゃうんですよね。現に、少し前に読んだところなのに、今もう一回読み直したらまた泣きましたもの。
《概略》
ある夕食後のオレンジぷらねっとの食堂で一つの小さな騒ぎが起こります。それは、初めてアテナがお皿を割らずに8日目を迎えたこと。他のウンディーネたちから口々に『おめでとう』と言われるアテナですが、幸せな時ほどドジをする体質のアテナが皿を割らないということはそれだけ深い懸案を抱いているということでした。
その懸案事項はオレンジぷらねっとを最大手にまで押し上げた超有能な管理部長・アレサからの呼び出し。そして、その内容は、何度も片手袋(シングル)への昇格試験に落ちている両手袋(ペア)への『最後の』試験の告知。
高度な効率化のなされているオレンジぷらねっとで、三大妖精と呼ばれる稼ぎ頭のアテナが丸一日かかる片手袋の昇格試験を通常に行うことがあるわけもなく、それがある時、それはすなわち、それがその子の未来を断つ『最後の試験』に限られ、今回もそうであると。(4人目)
少女・アメリの試験。
途中何度も接触を起こしながら辿り着いた水路のゴール、まっすぐにアメリの目を見つめてアテナは不合格を告げました。
夕日も沈んだ丘で帰りのゴンドラを漕ぐアテナと入れ替わろうとするとき、アメリはアテナの両手のひらが血で汚れ、傷ついていることに気付きます。ゴンドラの接触を防ぐため、何度も何度も素手で壁を押し返し、その痛みを一切表情に出さずに優しくこの丘まで導いてきたアテナ。
アテナに『なぜ不合格なのにここまで引き返さずに来たのか』と責めるアメリに対し、アテナはこの丘がウンディーネの間では『希望の丘』と呼ばれていて、どうしてもアメリと一緒にこの光景を見たかったと答えます。
『あそこで回っている風車は、あのネオ・ヴェネツィアの風景は、別にウンディーネのためだけに作られたわけじゃないわ。ただあそこで未来への希望を胸に抱いたウンディーネの卵たちがあの美しい風景と自分の未来を重ね合わせて、希望の丘と呼ぶようになったのだと思うの。だったら、別にあの丘はウンディーネたちだけの希望の丘である必要はないでしょう。あなたの希望の丘であっても構わないはずよ。』
『私の・・・希望の丘』
『そうよ。私の希望の丘だし、あなたの希望の丘なの。だって希望は、それを望み続ける限り、すべての人の心の中にずっと宿っているものなのよ。私は今日あなたと一緒に見た景色を絶対に忘れないわ。だからあなたも私と一緒に見たあの景色を忘れないでいて。そうすれば、きっとあなたの中の希望は、いつまでもずっと灯っていられるはずよ。』
晴れやかな表情でアメリがオレンジぷらねっとを去った翌日、試験の振り替え休日。一睡も出来なかったアテナにアリスは練習に付き合ってもらうよう頼みます。
穏やかな操舵のゴンドラの上で、アテナはだれも幸せに出来ないこんな自分がアリスを正しい道に進ませていけるのだろうかと悩み、また歌しかなく、ウンディーネとしての道を迷う自分にアリシアと晃という親友が出来たことなどを思い出しながら、夢の中へ。
目を覚ましたアテナが目覚めたのはなんと『丘』のゴールのすぐ手前。アリスは、元気のないアテナのことで灯里たちに相談し、自分の力で発見したこのお気に入りの場所へ、苦労しつつも、アテナを一度も起こすことのない操舵で連れてきたと。
『アテナ先輩、もう少し進んでみましょうか。今日ならもしかしたら一番上まで行けるかもしれない気がするんです』
そう言ってくるアリスに小声で『そしたら途中で寝てた試験官が怒られてしまうわ』なんてことを言っちゃいつつ、真っすぐに育っているアリスに安心したアテナはその翌朝、皿を割って新記録の更新を終了しました。
数週間後、観光ルートで希望の丘から戻ってくる途中、アテナがすれ違ったのは、小さな規模の水先案内店のベテランウンディーネを乗せた黒いゴンドラ。そして、それを操るのは、不安定さの無くなったまっすぐ前を見つめるアメリ。
ぶつかることなくすれ違ったアメリの背中にアテナは『がんばって』と声をかけ、それにアメリはたくさんの思いを詰め込んで『はいっ!』と答え、その日、アテナのゴンドラに乗っていたお客さんは、聴きなれているネオ・ヴェネツィアの人々の時間さえ止めるような最高のカンツォーネを聞くことが出来ました。
夕方、管理部長・アレサの部屋に飛び込んだアテナは、聞きました。
今までアテナが『最後の試験』を行った生徒たちにも、アテナはそれぞれの『未来への希望』を見出させていて、そして、アレサはそれぞれの想いが叶えられる活躍の場を丁寧に斡旋していたと。また、自分が若いころの身体の無理からウンディーネとして活躍し続ける未来を諦めた時に、『希望』を与えてくれたのもアテナだったと。
その日の夕食、アテナは幸せ過ぎて食堂入口の皿の山に突撃し、本人に怪我はないものの、47枚の皿を再起不能にして、アレサからは始末書と休みの取り消しを、アリスからはしばしの絶交を食らいましたとさ。
概略だけでも、長々書きましたが、この小説自体、どれも良い話だし、アリスの本当の試験の前には是非とも抑えておいてほしいと思います。
そして、最後はもちろん。
・ 『ARIA The ORIGINATION』第9話『その オレンジの風に包まれて・・・』。
この話はまさに13年前、リアルタイムでブログに感想とか書いてるのでこちらで。
いやー、やっぱり泣いちゃいました。
そして、上の小説を読んでからだと、後付けなのかどうなのか、アリスは試験の時に既に、この水路の案内とか水上ゲートのおじさんと知り合いっぽかったりとか、ちゃんと前に来たことある設定になってるんですよね。
で、アテナさんがアリスにピクニックに行こうと誘うときの『今度こそ』みたいな台詞も生きてくると。
いや、流石に詳しいところまでは忘れてるので他にフラグがあったのかもしれませんけど。
あ。上の《秋》の小説書いてるの、まさにこの話の脚本つとめてる浦畑達彦さんだ。ということは、決まりだな。
そして、アリスの飛び級昇格の時、一人だけ女性の(アリス曰く)『会社の偉い人』はアレサなのか?
よし、映画観る準備は完了です。
でもまぁ、アレですよ。別に明日の映画は泣かせる系とかじゃないと思うんで、もう普通にサラッと見ちゃって、グッズがあったら買って、帰ってきますよ。
流石にそうそう泣きませんよ?(フラグ)
〈絶対に映画観てから読んでください!〉